自動ドアの安全の話

 2006年にこんな事件がありました。
 東京都小平市にあるスーパーで、認知症の80代の女性が前方の客に続いて店に入ろうとしたところ、閉まりかけた自動ドアに接触して転倒。骨折をしてしまったと言うものです。
 女性はその3年後に亡くなったのですが、歩けなくなったことがきっかけで痴呆が進んだとして遺族が訴えを起こし、東京地裁がスーパー側に1175万円の支払いを命じました。

 自動ドアの事故と言うと挟まって怪我をすると言うイメージの人が多いかもしれませんが、一般的な自動ドアは人を締め付けて怪我をさせるほどのパワーは持っていない為、自動ドアで起こる事故の多くは、上記のように扉に通行者がぶつかって怪我をすると言うものです。

 扉にぶつかってしまう理由なのですが、故障で人がいるのに閉まって来てしまうと言うケースはほとんどなく(故障の場合は動かないか開きっぱなしになるように作られている為)、自動ドアが古くなり人が近づいても開くのがワンテンポ遅れて、開くものと思い通ろうとした人がぶつかってしまったり、ボタンで開ける自動ドアの一部では、再度ボタンを押さない限り人がいても構わず閉まってくるため(注)、それでぶつかってしまうと言う場合など、故障とまでは言えない状態で起こる事故が多いです。
※注、現在当社の施工では必ず共連れ対策のセンサーを設置させていただいております。

 では、そのようなのような故障とまでいかない状態で事故が起こった場合でも責任を取らなくてはいけないのか。
 また、責任を取る場合には、誰が責任を取らなくてはいけないのか。

 民法の第717条にこうあります。

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
1、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2、前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3、前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

 要約すると、危険な状態で放置していた場合、その建物で怪我などした人がいたら、その建物を占有している人。つまりマンション入り口であればマンションを管理している人、お店であればお店を管理している人が責任を負うと言うことです。
 但し書きで、建物を使用している人が注意を払っていた場合には建物の所有者が責任を負うとなっていますが、実際に事故が起こってしまっている以上、注意を払っていたと証明するのは非常に困難です。

 例えば、お店の壁のタイルがはがれ落ちて通行人の頭に当たって怪我をさせてしまった場合、まずはお店の主が責任を問われ、主が毎日壁をチェックして安全に気を使っていたと証明した場合には、建物のオーナーが責任を負うことになります。
 ただし、実際にタイルがはがれて通行人にぶつかってしまっている以上、安全に気をつかっていたとしても、十分ではなかったと言うことになります。

 自動ドアの動きが悪くなり人がぶつかったりしているような場合には対策をきちんと取り、管理人がしっかりチェック出来ないような場合には定期点検契約を結ぶなどし、しっかりと安全管理を行うことが、通行人の安全を守ることになりますし、建物の使用者と所有者を守ることにもなるのです。


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